2012年1月28日土曜日

政治 と 精神医学 :”権力者や政治家について分析するのも精神医学の役割”?

”精神科と政治” ・・・ というテーマを考えるには良い材料なのかもしれない。


◆ “政治 → 精神医学”

精神医学を政治的悪用に関する歴史的概観

Political Abuse of Psychiatry—An Historical Overview
Schizophr Bull (2010) 36 (1): 33-35. doi: 10.1093/schbul/sbp119 First published online: November 5, 2009



世界の精神医学界において議論されてきたことらしい

1970年代、1980年代にソビエト連邦における精神科のシステマティックな政治的乱用、そして精神病院への強制収容が背景にある。
その後、ソ連邦崩壊につながる過程の中、1983年強制収容が無くなり、World Psychiatric Associationにとって、政治的利用がテーマとなった。
精神医学的診断・治療を政治的に利用することは特定の人々・特定の団体の人権を剥奪することである。
ソビエト連邦政府に反対すること自体がメンタルに病んでいるというSoviet regimeが存在した。

 診断者側が能動的に政治的スタンスにより”精神病”診断することは、すなわち、精神医学の乱用なのである。


◆ “精神医学” → ”政治”

医学・医療として、特定対象者を相手にする医療・診療以外に、特定の集団を相手にする公衆衛生学や疫学などがある。

個別診療を基本とする精神医学者・医者は、みな、後者のエキスパートと言えるだろうか?

考えるまでもなく No! 



精神科医の香山リカ氏 vs 大阪市市長 橋下徹氏のバトルをみると・・・ 

”香山リカ”氏の主張に気になるところがある。

精神科医は本来、目の前の患者さんを診断し、治療するのが主な役目です。しかしもう一つ、患者さんが接する社会全体あるいはそこで傑出し た存在となっている権力者や政治家について分析するのも精神医学の一つ役割であり、これまで内外の多くの精神医学者が取り組んできました。これは、社会精神病理学、歴史精神医学などと呼ばれています。 (http://bit.ly/xhyKpF)


社会精神医学 について、社会精神医学学会(http://www.jssp.info/honkai/about.html)では
社会精神医学 :社会精神医学とは、こころの健康問題のなりたちを生物・心理・社会的側面から総合的に分析し、その結果を社会に役立てていく学術分野です。 社会精神医学は、精神医学を基盤としながらも、心理学、社会学、法学、経済学、宗教学など、広範な学術領域とつながりをもちます。 社会精神医学における研究の方向は次のとおりです。
(1)こころの健康と社会のかかわり
(2)精神障害者の社会的特性
(3)精神障害者の地域社会におけるあり方
(4)精神疾患についての社会科学的アプローチ
(5)自殺、虐待、犯罪などの社会病理現象にかかわる精神医学的アプローチ
(6)精神保健活動
と説明している。

この中に、政治(もしくは政治に関わるもの)を精神医学的に分析する 項目は存在しない。また、特定の社会集団を”病名づけ”するような精神医学の分野でもないようだ。



”権力者や政治家について分析するのも精神医学の役割”と断定しているが、はたしてそうなのだろうか? かりに、言い分を100%受け入れたとしても、香山氏は、氏が主張する”病理”を一般が納得する分析を提示するのが前提だと思う。 医学者というなら、科学者というなら、システマティックに文献を並べて、論説すべきだ。

精神科医師個人の価値観だけで、特定の集団を病的と判断することって、科学なのだろうか?医学なのだろうか? 


歴史精神医学 ? ・・・ 精神医学のhistrical viewのことだろうか、はっきりしない分野だ。





精神科医だからといって、自分にとってシンパシーを感じない(個人)集団を、合理的・科学的・構造的分析無く、病名付けする言動は許されないはず・・・

”ボーダーライン・パーソナリティー障害” と心証づけしただけで、診断した覚えはないというのが氏の言い逃れ。
 
ソビエト連邦での精神医学の政治的利用の”歴史(としての)精神医学”を理解していれば、精神科医としては、診断や判断などは、政治的に中立であろうとするだろうし、情緒的な言動は差し控えるはず・・・なのだが・・・



なお、この方が、”芸名をつかって医師”として、”診断”とい医師う業務独占活動をおこなうことに、以前から、矛盾を感じている。


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